IT融合シンポジウム

10月10日に開催されたIT融合シンポジウムに参加したのですが、Google Inc. 上級副社長兼最高法務責任者デビッド C.ドラモンド氏の「法とビッグデータの時代」の講演は、当初通りの構成だったのでしょうか、、と今更ながらコメントを。

当初はテーマ通りの内容の講演をされるのかと思っていたら、林信行氏との対談形式ということで、それ自体は別に構わないのですが、なぜか内容はgoogleイノベーションといったどちらかといえばビジネスよりの話で、それをあえて最高法務責任者であるドラモンド氏に聞かなくても良いのではという内容だったので。
林信之氏が本件についてツイートしているtwitterのを読む限り、主催者側の要請とのことですが、「ちょっとタイトルからは外れる話」どころか、「まったくタイトルとは関係ない内容」でしたよ。

おそらく、このタイトルと肩書き、そして講演概要を読んで、その話が聞きたかったので、個人的に非常にがっかりしました。。。
しかし、なぜこのように変わってしまったのかは謎ですね。。
主催者として挨拶されていた岸本周平経済産業大臣政務官ブログに書かれていますが、

このシンポジウムに講師として来日していた、Google社のデビッド・C・ドラモンド上級副社長と対談しました。

 彼は、スタンフォード大のロースクール出身で、カリフォルニアなまりの聞きやすい英語で語るナイスガイです。(私の場合、分かりやすい英語をしゃべる方は、みんなナイスです。爆笑。)

 まず、Google社にも協力いただいている自動車情報の利活用に関する意見交換。

 また、先方からは、青少年保護によるインターネット上の表現の自由に関して、重大な関心が寄せられました。

 日本では、本件では政府の関与は最小限にとどめ、ユーザーの「フィルタリング」の利用を対策の要としている旨を説明。同意を得られました。

とあり、このあたりのテーマの話でも十分盛り上がりそうでしたが。

あと、対談という形であれば、例えばドラモンド氏の次に講演された野口祐子弁護士との対談とかだと面白かったのではと思ったり。ちなみに、野口弁護士の話は非常に面白かった。講演資料も公開されているようです・
日本のイノベーションを促進するための法的課題

ちょっと個人的にかなりがっかりしてしまったので、とりあえず備忘録?として書いておきます。

岡部伸「消えたヤルタ密約緊急電」

消えたヤルタ密約緊急電―情報士官・小野寺信の孤独な戦い (新潮選書)

消えたヤルタ密約緊急電―情報士官・小野寺信の孤独な戦い (新潮選書)

これはインテリジェンス本が好きな人にとっては徹夜本になる本。500ページ近くあり最初は躊躇するが、読み始めるとこんな歴史があったのかという驚きの連続で、第二次世界大戦をめぐる各国首脳の思惑とインテリジェンスの高度なやりとりに、本当にこれが現実にあったのかと思わされる。
それにしてもここまで調べた筆者の執念?も凄いもの。この筆者の執念は、ジャンルは違えど下記の本の著者と同じ執念を感じますね。
木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

おそらく本書の中でも筆者のエピソードとして記載されているが、新聞記者として上司にスクープ情報を信用してもらえず、大スクープを逃したという悔しい思いがあったからなのだろう。しかもこちらは、日本の運命を決める大スクープ情報だったのだから、誰もがなぜこのような情報を握りつぶしてしまったんだ、、という思いである。
そして、やはりこのような情報を入手できたのは、小野寺情報士官の人柄とコミュニケーション力が大きいようだ。

小野寺は、人種、国境を超えて、さまざまな国の人たちと協力して貴重な情報活動に成功することになるのだが、「回想録」で、「情報活動で最も重要な要素の一つは、誠実な人間関係で結ばれた仲間と助力者を得ること。その点で、まことに幸運だった」と振り返り、「年齢、国境、人種を超えて信念で固く結ばれた人間関係は、この上もなく尊いものと思う」と記している。(p.213)

なぜ世界最高水準の機密情報が握りつぶされてしまったのかという話も非常に面白いが、なぜ、そしてどのようにしてこのような機密情報を得ることができたのかという観点で小野寺情報士官の人生ストーリーを読み進めると、別の観点で考えさせられるものがあった。
なお、この手の話であれば当然なのかもしれないが、解説は佐藤優氏が執筆されている。

(参考)新聞社の書評

坂口恭平「Tokyo0円ハウス0円生活」

TOKYO 0円ハウス 0円生活 (河出文庫)

TOKYO 0円ハウス 0円生活 (河出文庫)

噂に聞く坂口本で初めて読んだ本。まだ話題の新書は未読ですが・・・。本書は非常に不思議?な感覚を覚える本。路上生活者が暮らす0円ハウスを建築として捉えるという考え方はこれまで考えたことがなかった(そもそも本書にあるような多機能な家がある事自体しらなかった)が、このような視点のもとでここまで整理し、訴えることができるのかという点で新鮮な気分を覚えた。

僕がなりたいと思っていた職業は、現在考えられているような建築家という仕事ではないことがわかった。
それじゃあそれが一体何なのか。それを伝えるために、まずはこの本を提示してみたいと思う。僕たちはお金を稼いでデカイ家を建てることを夢見るのではなく、自分にしか作ることができない家に住んで、自分にしかできない生活の方法を見つけることを先ずはやらなくてはいけない。(p.269)

自分の生活の方法を見つけること、この点で本書は本質的な生き方の一面を0円ハウスを通して描いているのでしょう。色々と0円ハウスの写真やデザインなどもあり、非常に読みやすい本だと思います。話題の新書のほうも読んでみようかと。

野尻抱介「南極点のピアピア動画」

南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)

南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)

話題になった本書を図書館で予約していて、ようやく借りて読了。4つの短篇集ということで、数時間で読み終えましたが、かなり楽しく読めた。個人的にはタイトルである1話めの「南極点のピアピア動画」が個人的に好きな宇宙飛行ものということもあり、強く印象に残った。ピアピア動画というネーミングに色々と意味を感じることができ、これを素材にうまくSFとしてストーリーの中に盛り込めているのが、違和感なく読めるところなのだと思う。
ところで、この話と非常に近いと個人的に感じている宇宙飛行物?のイベントが今現在進行中で進んでいる。それは、地上36,576メートル、成層圏からのフリーフォールプロジェクトである「レッドブル・ストラトス」!
成功すれば、次の4つの世界記録になるとのことで、Jsports等でも生中継される予定。

  1. 「最高高度の有人気球飛行(36,576メートル/120,000フィート)」
  2. 「最高高度からのスカイダイビング」
  3. 音速の壁を越える人類初のフリーフォール」
  4. 「最長時間のフリーフォール(約5分30秒)」

予定では、10月8日に打ち上げられる予定が、9日に延期になり、そして昨日の打ち上げも強風のため延期となってしまっているが、下記の紹介動画などを見ていると、非常に胸が熱くなる。。。

この挑戦もリアルタイムでフォローしておこうと思ってます。

ティム・ウー「マスタースイッチ」

マスタースイッチ

マスタースイッチ

発売直後に買っていたものの、400頁弱で上下二段構成なので、読むのに時間がかかってしまいました。米国における独占と競争の歴史とその中でいかにして独占を分離する動きが起こってきたのかをかなり詳細に論じた本で非常に興味深い示唆がたくさん書かれています。ただし、取り上げられているのは米国の電話や映画、CATV、コンピュータ、インターネットなどの技術史なので、馴染みがない業界、会社も少なくなく、このあたりに関心もてるかどうかで好みが分かれそう。

要旨は小林啓倫氏の「【書評】イノベーションを殺す「クロノス」とどう付き合うのか――『マスタースイッチ』」にて丁寧にまとめられているのでこちらもご参照いただくと良いかと。

個人的には、自由と独占について法学者のティム・ウーがどのように分析するのかという点で読みましたが、その点では若干物足りない感があった。

 情報産業では、「分離原則」の重要性を認識することが大切だ。いや、「改めて認識する」といったほうがいいだろうか。ともかく分離原則で私が主張したいのは、情報産業を構成する様々な機能の間に、健全な距離を保つことだ。主な機能同士を分離すれば、新興企業を古参の巨大企業から保護することにもなるし、政府と産業の間の距離も保てる。
 一歩間違えば強大な力を持ちかねない集権的な力は、分離することが大切なのだ。立法、司法、行政の三権分立や、政教分離も同じ発想だ。つまり、政治の世界でごく当たり前の原則を、情報産業にも適用してはどうかということである。(p.350) 

そして、この分離の形態として、以下3つの形態に分類し、これまでの米国の情報産業の歴史を紐解いている。

  1. 一時的分離
  2. 市場間、機能間、プラットフォーム間の分離
  3. 規制による分離

この3形態にこれまでの米国の情報産業を当てはめて分析されており、その点は非常に勉強になった。

ただ、本書の最後に監訳者の坂村氏が書かれている点でもあるが、もう少しこの「独占の良きコントロール法」の方法論についてボリュームをかけて議論して欲しかったと感じた。

独占には良い面もあることを著者も認めている。その上で、「独占の良さを残し、その弊害を最小化するにはどのような規制の形が望ましいか」―つまり「独占の良きコントロール法」という方法論で高度な議論を行う段階に、試行錯誤のすえとはいえ、米国は進んできている。(p.377)

米国の情報産業史やその技術史、人間史は非常に面白くそれだけでも本書を読む価値はあるものの、確かに結論そのものはかなり曖昧な形で書かれているようにも感じるため、その点では、山形浩生氏がyomoyomo氏のブログのコメント欄で書かれていた指摘にも少し共感したり。

ティム・ウー、打診きたけどけっぽってしまいました。だってティム・ウーの本ってすべて「もうすべて国家が仕切ってるんだよ、大企業が仕切ってるんだよ、自由なんて思ってる君たち、甘ちゃんすぎ、あらゆる抜け道はふさがれていて、もうどうしようもないから、みんなかえってクソして寝ろ、あ、かーすかに希望のあるところも……でも無理だから期待するだけ無駄、じゃあねー」というだけで、何も提言がないんですもの。

ただし、これだけの大著なので、1度読んだだけで理解しきれていない点もあるので、また要所要所を読み返しつつ、個人的にも考えを深めていく必要はあるなぁ。この分野に携わる人には是非目を通しておきたい一冊であることには間違いないかと。
本書については、再読した上でもう少し深掘りして考察したものを書きたいと思う。いつになるかは未定ですが。。

屋久島の縄文杉を見てきた

9月27日〜29日の2泊3日で(一人でw)屋久島に行ってきました。目的は定番の縄文杉を見ることということで、28日に決行。3月〜11月は登山口への一般車の駐車は禁止されているため、登山口までのバスの出発地点である、屋久杉自然館までレンタカーで行きました。登山口までのタイムスケジュールはこんなかんじ。

  • 3:30 起床
  • 4:00 宿(安房)を出発
  • 4:20 屋久杉自然館着
  • 4:40 荒川登山口行きのバス出発(始発)
  • 5:20 荒川登山口着

平日朝一の始発バスとはいえ、人はそれなりにいるだろうと思ってはいましたが、バス1台分が補助座席含めすべて満員で、数人次のバスにまわされていました。自分はそのバスに乗れた最後の一人だったので、一番前の補助座席に座ることに。本来であれば貴重な睡眠時間ということで寝たいところなんですが、真っ暗な道でしかも途中から車一台分の道幅を通るバスの運転手の運転テクニックをずっと見ていました。まぁ、半分は怖くて眠れないのですがw

荒川登山口に到着後の雰囲気はこんな感じ。まだ真っ暗です。

以降のタイムスケジュールは以下のとおり。

  • 5:40 荒川登山口出発
  • 6:15 小杉谷小・中学校跡着
  • 6:40 三代杉
  • 7:30 大株歩道入り口

荒川登山口から、大株歩道まではトロッコ道をひたすら歩きます。
こんな道をひたすら歩く。



この大株歩道入り口の少し手前で何頭か鹿を見つけた。こんなに近くに。

そして、大株歩道入り口にはこんな看板がありました。

まだこの時点で7時半で、しかも先行していた人たちも抜いてしまって人が前にも後ろにも誰もいない(実際にはまだ前に数人先行していたのですが)。
看板に書いてあったようにここでトロッコ道は終わり、ようやく本格的な登山道に。とはいえ、ある程度は整備されているので、一人とはいえ迷うことなく進めました。
こんなところを歩くことになります。


  • 7:40 ウィルソン株
  • 8:20 大王杉、夫婦杉
  • 8:40 縄文杉到着

事前情報としては、片道5時間程度かかると聞いてましたが、やはり男一人でノンストップだったんで、3時間で着いてしまった!

縄文杉で少し写真撮影などをしつつ、9時に来た道を帰ることに。帰りのバスの始発が14時なので、このペースだと早くつきすぎると思い、帰りは少しゆっくり歩くことに。とはいえ、特に休憩する必要もなかったのでゆっくり歩いたとはいえ12時半には荒川登山口に戻ってきてしまい、14時までの1時間ほど何もない登山口で時間を潰すことに。荒川登山口には縄文杉で先行していた自分と同じ1人旅をしていると思しき男性2名がいて、3番目にゴーール?別に時間を競っているわけではまったくないですが。。

このように書いてしまうと、予想より楽なように思うものの、それでも7時間歩き続けたので、結構足の疲労は限界に近かった。トロッコ道も結構不安定な道で歩きにくく、やはり普通のアスファルトの10キロランとは疲労度は違いますね。。。当たり前ですが。

さて、肝心の縄文杉の感想等は特にかいてないですが、まぁそれは是非皆さんに直接見に行ってきて感じて来てください!一度は行って絶対に損はないところです。

宮部みゆき「ソロモンの偽証 第二部決意」

ソロモンの偽証 第II部 決意

ソロモンの偽証 第II部 決意

第1部の事件編を踏まえ、いよいよ第二部では学校内裁判に向け、弁護側、検事側それぞれが証言集め等にそれぞれ動きだし、第1部同様躍動感のあるストーリー展開があり、第二部もほぼ一気読み。
内容としては、少しずつ色々な伏線のようなものがでてきて、おそらく何かしらの驚きの展開がこのあと第3部で展開されるであろうことが予感される。普通の考えれば彼が〜という展開が考えられるが、まぁここではあまり書かずに、第3部を読み終わったら改めて振り返ってみたい。タイトルの「ソロモンの偽証」にヒントがあるような気はする。
それにしても10月に出版される第3部も楽しみ。この週末のほとんどをこの2冊を読むのに使ってしまったが、まぁこんな平和な週末がたまにはあっても良いでしょう。小説を読むだけで週末を使いきってしまったのは、おそらく貴志祐介「神世界より」以来。