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そのような市とその住民が都市計画に責任を持つというシステムの中で、米国内の各都市は、大学院レベルの教育を受けた都市計画の専門家(プランナー)や建築家を抱え、市民団体と協力しながら計画を作成していくことになります。特に大都市においてプランナーの層は厚く、市民団体やデベロッパーと交渉して、市としての政策目標に沿った妥協点を探っています。その意味で行政の役割は、専門知識を持ったコーディネーターという色彩が強いかと思います。安全性などは明確な基準(規制)がありますが、まちの美観をどうするか、用途をどう配分するかといった点は主観が判断を左右しますから、交渉の結果は仲立ちするプランナーの交渉力や専門知識といった力量に大きく依存することになります。
都市制度の地方分権は、「個性」のあるまちづくりを可能にすることのみを全面に出し、あたかもバラ色の制度であることを言っているような向きもありますが、「個性」とは勝者と敗者の格差をさらに広げる可能性を秘めていることや、必ずしも経済合理性に適合しないことを踏まえて制度の選択と設計をしていく必要があるのではないかと思います。
日米の都市政策に関するわかりやすいレポートだと思いました。アメリカにおけるコンセンサスビルディングのニーズの高さはこの制度に少なからず影響を受けているのでしょう。
コンセンサス・ビルディング入門 -公共政策の交渉と合意形成の進め方
- 作者: ローレンス・E.サスカインド,ジェフリー・L.クルックシャンク,城山英明,松浦正浩
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2008/04/11
- メディア: 単行本
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