知床の世界遺産登録と羅臼町

あまりこの件に関しては詳しくもないし、それほど調べてもいないのだが、今年7月に南アフリカで開かれる第29回世界遺産委員会ダーバン会議で、知床の登録の可否が決まることになっているらしい。

で、その状況だが、どうやら知床特派員に掲載されている世界自然遺産 「知床」日本の回答評価 IUCN部長 「海域管理計画すばらしい」という記事を読む限りでは、

北海道・知床の世界自然遺産登録を審査している「国際自然保護連合(IUCN)」のデビッド・シェパード保護地域事業部長は、3月末に日本政府が回答した知床半島海域の「多利用型統合的海域管理計画」を「地元漁業者の合意を得た、すばらしい計画」と評価した。環境省幹部との会談で、個人的な意見として明らかにした。また、5月末までに登録の是非を評価した報告書を完成させることを約束、審査は最終段階に入った。
と好評価を得ているようで、世界史全遺産として登録される可能性も高そうだ。

ちょっと古い記事になるが、世界自然遺産の審査機関 IUCNの世界戦略なんかを見ても、

IUCNは、1999年にもアンバランスな自然遺産を解消しようと、ユネスコ世界遺産条約加盟国に自然遺産の暫定リストを提出するよう求めた。
 日本政府の「世界史全遺産候補地に関する検討会」もこの動きを察知。昨年5月、知床、小笠原諸島琉球諸島といずれも海洋を含む地域を推薦候補地と決め、第1候補に知床を推薦していた。
 今回の世界大会でも、海洋保護が重要なテーマとなった。最終日には、これまで自由な漁業が認められている「公海(外洋)」でも乱獲を防ぐため、自然保護区を実現させるとの決議を採択した。
 世界の10指に入る遠洋漁業国日本、北海道の水産業にとっても、海洋保護の動きは避けて通れない問題だ。
 民間シンクタンク三菱総合研究所」の古田尚也主任研究員は「今後、5年で海洋保護区は自然保護の最大のテーマになる」と分析する。
とあるし、海洋保護区が自然遺産としてブームとなりつつあるようで、知床もその戦略の一つとしてとられたこととなる。

で、それに関連してだが、その知床の世界遺産登録への動きを推進している自治体が結構ピンチな感じ。「合併ご破算 生き残り策/羅臼町」という記事にあるように、

羅臼町の主な財政見直し策 ■

 ◆住民負担(10項目)
 ・水道料金      10%値上げ
 ・健診手数料      5%負担増
 ・高齢者インフルエンザ予防接種料
            14%負担増
 ・自転車ヘルメット補助    廃止
 ・印鑑登録カード      有料化

 ◆住民サービス(11項目)
 ・町民交通傷害保険補助    廃止
 ・ふるさといきいき事業補助  廃止
 ・花いっぱい運動苗代助成   廃止
 ・町内会助成  電気料60%に減額
 ・長寿祝い金  88歳、99歳廃止
 ・老人クラブ補助
         単位クラブ10%削減
         連合クラブ20%削減
 ・スキーリフト    1基運行停止
 ・各種団体の補助
           人件費10%削減
           運営費20%削減

この状況はかなり悲惨です・・。漁業に関しても、
町経済を支える水産物の水揚げ高は、不漁続きで90年代初めの250億円をピークに約100億円まで激減。この10年で人口がほぼ1割減ったこともあって町税は半分近くに。
こんな状態で、よく地元漁業者の世界遺産登録への協力が得られたなぁ〜と不思議に思ってしまうほどだ。

しかし、そのような中でも地元住民の世界遺産への登録に向けた活動は積極的で、クリーン作戦のような活動も行っているようである。

国家の世界遺産登録戦略のなかで、知床の世界遺産登録を得て、羅臼町の再建をはかろうとする町民の熱意をどのようにアウトプットさせていくのか、これが文化遺産政策の難しいところなのかもしれない。

*知床に関しては↓参照。
大いなる知床