アダムスミス
アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書)
- 作者: 堂目卓生
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/03/01
- メディア: 新書
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社会秩序を導く人間本性は何か。社会の繁栄を導く人間本性は何か。道徳感情論でのこのアダムスミスの考察が、ハイエクにも通じているということが本書を読んでわかり、理解が深まりました。
スミスの議論の特徴は、人間の中に「賢明さ」と「弱さ」の両方があることを認めている点である。そして、人間社会の秩序と繁栄という大目的に対して、「賢明さ」と「弱さ」は、それぞれ異なった役割を与えられている。すなわち、「賢明さ」には社会の秩序をもたらす役割が、「弱さ」には社会の繁栄をもたらす役割が与えられている。特に「弱さ」は一見すると悪徳なのであるが、そのような「弱さ」も、「見えざる手」に導かれて、繁栄という目的の実現に貢献するのである。しかしながら、「見えざる手」が十分機能するためには、「弱さ」は放任されるのではなく、「賢明さ」によって制御されなければならない。(p.104)