アダムスミス

ハイエク本を読んでいたら、やはりアダムスミスをもう一度読み直さないといけないなぁと思って、まずは先日サントリー賞を受賞した本書を読んでみることにしました。国富論は学生時代に一度読んだことがあるのですが、道徳感情論は読んだことがなかったので、本書を読んでアダムスミスのイメージがかなり変わりました。
社会秩序を導く人間本性は何か。社会の繁栄を導く人間本性は何か。道徳感情論でのこのアダムスミスの考察が、ハイエクにも通じているということが本書を読んでわかり、理解が深まりました。

スミスの議論の特徴は、人間の中に「賢明さ」と「弱さ」の両方があることを認めている点である。そして、人間社会の秩序と繁栄という大目的に対して、「賢明さ」と「弱さ」は、それぞれ異なった役割を与えられている。すなわち、「賢明さ」には社会の秩序をもたらす役割が、「弱さ」には社会の繁栄をもたらす役割が与えられている。特に「弱さ」は一見すると悪徳なのであるが、そのような「弱さ」も、「見えざる手」に導かれて、繁栄という目的の実現に貢献するのである。しかしながら、「見えざる手」が十分機能するためには、「弱さ」は放任されるのではなく、「賢明さ」によって制御されなければならない。(p.104)