政策革新

政策革新の理論 (政治空間の変容と政策革新)

政策革新の理論 (政治空間の変容と政策革新)

某図書館で読む。主に第1章。
政策システム論における「政策システム」「メタ政策システム」「メタ政策」という概念を用いて、政策革新が起こる際の分析手法を提起する。

政策革新の成否の鍵を握るのは、個別の政策内容が改良されることだけではない。それらの改善策が革新的なものであるためには、政策形成に関与する主体の間の相互作用の構造(=政策システム)を解明した上で、その構造に対して各主体が直接的あるいは間接的に働きかけることを通じて政策革新を実現するメカニズム(メタ政策システム)を探り、その過程において用いられる戦略を理解することが必要となる。また、政策システムが自己革新を遂げるため、あるいはメタ政策システム等が政策革新に影響を及ぼすために掲げる、当該政策の政策体系全体の中での位置づけ(=メタ政策)を明示し、それらがいかにして個別の政策革新をもたらし、ひいては政策システムの変容をもたらすのかを理解する必要がある。(p.9)

本章は本シリーズ本全体の分析枠組みの骨組みのようなものなので、正直本章だけ読んでも概念だけをなかなかわかりにくい。また、この第1巻に収められている論文は各巻のイントロ的なものばかりなので、なかなか理解しにくいところが多いのですが、政策システム論として政策変化を6つの種類の分類し、本シリーズで分析される事例をこれらの6つの枠組みに分類し、分析をしていくものであるという点はなかなか興味深いなと思いました。

この政策システム論のを用いて政策革新を説明する際には、以下の4点を明らかにすることが重要になるとのことです。

第一に、変化の性格である。
第二に、主体・ルール・場のいずれが、またはそれぞれが、いかなる環境条件の変化に対応して刷新されたのか。
第三に、変化に関わる時間と速度の問題。
第四に、変化に関わる主体の意図の問題。(p.26)

政策の変化をどのような観点から分析すればよいのか、というのは政治学行政学の領域でいろいろと議論がありますが、その中でこの政策システム論が今後どのような位置づけになるのかは興味深いところ。果たして本シリーズだけで終わってしまうのか、あるいは今後も従来の分析手法に対抗できる有益な手法として確立されるのか。
当てはめようと思えばいくらでも当てはめられそうな枠組みなので、その検証や批判に耐えうるものなのかはちょっとまだわかりません。おそらく本シリーズの事例等を通じてわかってくることなのでしょうが。

(参考)
政治空間の変容と政策革新」(東京大学出版会
UP5月号に「座談会 変わりゆく政治のあり方を考えるために 「政治空間の変容と政策革新」刊行開始にあたって 平島健司・城山英明・谷口将紀久保文明」が掲載されています。