グローバルスタンダードと国家戦略

あの坂村健氏が今どきのグローバル・スタンダード論を説く」(IT Pro)

 どの技術が世の中のスタンダードになるか---規格争いの行方は,純粋な技術論争を超えた政治的要因によって決まることが多々ある。その要因の一つに「国家戦略」がある,と同氏は語る。逆に言えば,国家戦略が弱かったところに,日本の技術が世界で花開きにくかったとの主張だ。同氏の研究生活において,政治的なパワー・ゲームに不利を被った実体験の数々を吐露している。

 これは,同氏の積年の思いを書き留めた回顧録ではなければ,研究報告書でもない。新しい時代のスタンダードとは何かについて,さまざまな視点の分析を加えた提言書である。多岐にわたる標準技術を例に,その意味をつづる。

 グローバル化時代だからこそ,グローバル・スタンダードが重要である---これは一般論として正しい。ただ,すべての技術領域でこれが真であるかといえば,必ずしもそうではない。その地域,その企業によって,グローバル・スタンダードの持つ意味は異なる。各人が意味をよく理解した上で国家戦略あるいは企業戦略を立てることが大切である。

 時として,グローバル・スタンダードから外れることが,その国あるいはその企業の利益になることもある。どの戦術を選択するか,その戦略にこそ本質があると同氏はみる。坂村氏は「グローバル・スタンダードこそがすべて」と思い込んでいる日本の体質に警鐘を鳴らす。

4757141009グローバルスタンダードと国家戦略
坂村 健

NTT出版 2005-10-25
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