NTT再編

NTTは「未来の衝撃」からいかに立ち直るのか」(CNET:森祐治)

 「第三の波」の著者として知られる未来学者の故アルビン・トフラーは、早すぎるテクノロジーの進展に社会や個人の行動や規範の変化が追いつかず、取り残され、その衝撃波に心理的に打ちのめされて、一時的に麻痺状態に陥った状態を「未来の衝撃」という言葉を使って表現した。その著書の中で、トフラーは「未来の衝撃」によって、本来とるべき判断や行動を誤るケースが多く現れるであろうという警鐘も鳴らしていた。

 そんな「未来の衝撃」にさらされたとき、一部の柔軟な人たち(大体において、社会的制約に縛られることのない裕福層や、そもそも逸脱をよしとしたアーティスティックな志向を持つイノベーター層)を除き、現状の文化や既存の制度を過剰に庇護しようとする行動に出やすい。本来ならば、避けることのできない衝撃波に全体をいかに対応させるか=ソフト・ランディングの実現が望ましいのは明らかだ。しかし、全体よりも目先の顧客や体制の維持=変化への耐性を備えようとする、すなわち「過剰な慣性」が生まれる傾向が強い。結果として、ハード・ランディングが生ずるのだ。

日本という国全体で見れば、「未来の衝撃」によって本来あるべき判断力が鈍らされた結果、皮肉なことにNTTの加入回線設備が広範に開放されてADSLが普及し、ブロードバンド大国への道を加速をつけて歩み始めるという、興味深い現象が生じた。そしてさらに、ADSLの普及は、従来、NTTがB-ISDN (広帯域ISDN)という異なる「未来」を実現することを想定して開発が進められてきた光ファイバの需要の緊急性を高めることになり、その普及が進むという、ねじれた結果を生んだ。