泥棒国家の完成

泥棒国家の完成
ベンジャミン・フルフォード

光文社 2004-03-24
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<目次>
1、The Iron Kleptocracy 鉄壁の泥棒国家
2、Bureaucrats As Thieves 官僚という泥棒
3、Robbery System 日本の泥棒システム
4、Japanese Media Isn’t On Your Side メディアも泥棒の味方
5、New Asian Order Without Japan 日本抜きアジア
6、The Last Resort 最後の楽園
7、The Sun Never Rises Again 日は再び昇らない
Appendix 巻末付録 
「愛する日本よ、どうか早く立ち直ってほしい」(講演録)
フルフォード氏の著作は一見非常にうかがわしい本でもある。
それはなぜかと言うと書いてある内容は大手メディアで放送されてないことであるからだ。大手メディアが書いていない情報(あるいは正反対の情報)は、知らず知らずのうちに「怪しいなぁ〜」と思ってしまうからだ。
しかしどうやら怪しいのは大手メディアのほうらしい。
たとえば本著ではいかのようなことが書かれていた。

なぜ、記者たちがここまで取材先に気を使うのかと言えば、それは記者クラブが、そもそもメディアのものではないからだ。官庁にある記者クラブは、官庁側が部屋を用意し、机から電話、コンピューターまで自由に使えるようになっている。お茶を入れてくれる秘書までいるところもある。そして、発表資料は机まで届けてくれる。だから、記者たちは自分達の会社に出勤するのではなく、クラブに出勤して、そこで至れり尽くせりの待遇の中で記事を書いているのだ。こうした環境におかれれば、ほとんどの人間が自分を特権階級だと勘違いし、まさか自分たちが泥棒に寄生する「寄生虫」だとは思わないのは当然だろう。(p.117-118)

日本の大手メディアのインチキぶりは、イラクへの自衛隊の派遣問題をめぐる論戦を見ると、よりはっきりする。政府と大手メディアのやりとりをみていると、この国は本当に気でもふれてしまったのかとさえ思えてくる。さらに、これに野党が輪をかけて、壮大なフィクションを一緒に演出しているのだから、絶望的だった。(p.126)

等々メディアに関してその情けなさを痛烈に批判している。

フルフォード氏は日本を「泥棒国家」だと言うが、その一番の問題は「政・官・業・ヤクザ」連合である、と述べている。
例えば、泥棒システムとして以下の5点をあげている。

1.公的資金による金融機関の救済というウソ八百
2.司法を抱え込んだインチキ裁判
3.お役所の勝手に出来る裁量行政
4.1票の格差が4〜5倍というゴマカシ選挙システム
5.臆病、勇気ゼロの大手メディア
(p.85)

また、不良債権に関しては、以下のように述べている。

いったい、不良債権という言葉がこの国の経済の表面に浮上してから、何年がたうのか?むなしく過ぎる月日を、日本の銀行関係者、政府は何をやってきたのか?なぜ、こんな単純なことを誰一人として実行しなかったのか?
その答えは、もう明白だろう。
不良債権処理が遅れたために、今後の日本は世界に類を見ない重税国家になろうとしている。泥棒たちが自分達だけは生き残ろうとして、国民にツケをまわし始めたからだ。彼らは1980年代の繁栄に浮かれすぎて、勇気すら使い果たしてしまったから、以来、臆病というからに閉じこもったまま、未だに一歩も出ようとしないのだ。(p.268)

フルフォードは早く改革(小泉首相の言う改革ではなく、それ以上の大改革)しなければ、日本はアルゼンチンになる、と述べる。とにかく、本書のほとんどがいわゆる日本の裏社会を描いており、読むもの全てが新鮮であった。

そんなフルフォード氏であるが、もう20年以上も日本に住んでおり、決して批判的に書いているわけではない。フルフォード氏曰く

ともかく、私は日本が心配で本を書きました。それは日本を叩くというのではなく、日本が好きだから、早く立ち直って欲しいと言う気持ちで書いたのです。本当にいろんな優秀な日本の企業人にもたくさん会っています。日本人の素晴らしいところもいろいろみています。
<一部省略>
私自身もまだまだ日本に惹かれているから、早く悪い連中を排除してくださいと言う気持ちなんです。(p.294-295)

色々な意味で、これまでとは別の日本の姿が見えてくる本。
何が問題であるか、それをしっかりと把握・分析して、今後の日本を考えて行かねばならないだろう。