小熊英二「社会を変えるには」

新書なのに約500ページもあるという本なので、読むのにも非常に時間がかかった。といっても、すべてを精読したわけではなく、個人的に関心のあった社会運動論について書かれている第1章〜第3章と第7章を中心に読んだ。

社会を変えるには (講談社現代新書)

社会を変えるには (講談社現代新書)

社会を変えることとはどういうことは、それはどのようにして実現することができるのかということをこれまでの歴史を踏まえて書かれており、この分野に詳しくなかったので、これまでの様々な研究の蓄積を知ることができたのは勉強になった。
結論からいえば、社会を変えるとは、

みんなが共通して抱いている、「自分はないがしろにされている」という感覚を足場に、動きをおこす。そこから対話と参加をうながし、社会構造を変え、「われわれ」を作る動きにつなげていくことです。(p.439-440)

個人的には、具体的な社会運動のノウハウについて説明しているところの内容をもう少し深く知りたいと感じた。
「イノベーター理論(p.453)」や「フレーミング(p.454)」などの運動理論はビジネスの領域においても多々活用しようとすることがあるため、特に考えさせられた。理論の使い方やそのコンセプトについても簡潔にではあるが説明がされており、面白かった。
なかなか自分で行動を起こして、社会運動に参画するというのは勇気や体力がいることだが、やはり自分や周りの家族、あるいは会社といった周りの環境を守っていくために、自分が何をしなければいけないのか、ということは自分で考えていくしかないということだろう。

動くこと、活動すること、他人とともに「社会を作る」ことは楽しいことです。すてきな社会や、すてきな家族や、すてきな政治は、待っていても、とりかえても、現れません。自分で作るしかないのです。
めんどうだ、理想論だ、信じられない、怖い、という人もいるでしょう。そう思う人は、いまのままでやっていける、このままで耐えられると思っている人なのでしょうから、これからもずっとそうして過ごしてください。いつまで続けられるかは、わかりません。あとはあなたが決めることです。(p.502)