銀輪の巨人

銀輪の巨人

銀輪の巨人

台湾の自転車メーカ「GIANT」成功物語が中心だが、出版社が東洋経済新報社ということもあり、ビジネス書という位置づけで読んだ。
GIANTのサクセス・ストーリーを踏まえて、日本の自転車産業衰退の原因を探るのがもう一つのトピック。

日本の自転車市場は特殊である。世界有数の自転車保有台数を誇っていながら、そのほとんどが通勤・通学用のママチャリであり、利ざやが大きいスポーツ車は日本では量は売れない、というのが業界の常識となっていた。
日本人はママチャリを中国からどんどん輸入し、価格が30年前とほとんど変わらない異常な状況に自らを追い込んでいった。それでもママチャリは年間、1000万台の需要がある。それを確保しておけば数百億円の事業規模は維持できる。無理して、コストがかかるスポーツ車の分野に打って出ることは控えよう。
日本ではここ20年間、こうした「現状維持」の判断のもとに、グローバルに見れば奇跡であるママチャリ市場に安住してきた。
ママチャリを消費者が選択することにも理由がある。通勤や通学における便利さ、公共交通機関が発達した日本の交通事情ー。しかし、週末のレジャーや通学のためにスポーツタイプの自転車がもっと普及してもいいし、通勤にもっと利用されてもいい。
iPadを5万円出して買うことを3年前の日本人には思いもつかなかったが、いまはそれが5万円を出してでも欲しい製品だと考えている。3年前の日本人にタブレットがどうしても必要だったわけではなく、製品が市場を作ったのである。それなれば1万円のママチャリではなく、10万円の自転車を買いたいと日本人に思わせることも決して不可能だとは思えない。
日本人にもっといい自転車を買ってもらえる余地はあったのに、日本の自転車メーカーは、日本の特殊な自転車市場に対して受け身のままで、そのガラパゴス的な特殊性を変えようとするのではなく自らを適合させようとしたところに間違いがあったのである。(p.169-170)

最近になって(震災後?)少しずつスポーツ自転車(クロスバイクロードバイク)に乗っている人が増えてきたように感じるが、日本の自転車業界はこのビジネスチャンスにいかに参入できているのだろうか。。自転車パーツのシマノ以外にももっと出てきて欲しい。
GIANTの創業者の劉金標の以下のコメントが、参考になるのではないか。

「私たちは自転車メーカーですけれども、いまは自転車を売るだけでなく、自転車の文化やライフスタイルの価値を売っているんです」(p.209)

まだ、未読ですが、自転車について色々なところで面白いコラムを書かれている松浦晋也氏の新著が気になっているので、合わせて読みたい。
「自転車2.0」と「自転車3.0」

のりもの進化論

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