ロードバイクの科学

これぞまさしくロードバイク愛用者必読本ですね。目次からも本書の網羅性や充実度が伝わると思うので、合わせて掲載しておきます。

ロードバイクの科学 目次
Chapter01:ロードバイクと“抵抗”の密接なる関係
1.ロードバイクはなぜ舗装の王者なのか? 2.空気抵抗ってそんなに大きいのか? 3.列車&ローテーションとは? 4.エアロポジションって? 5.ホイルの空気抵抗 6.車体の空気抵抗 7.服装と空気抵抗 8.重さについて 9.回転部の重量について

Chapter02:より楽に走るための調整と漕ぎ方のヒント
1.ケイデンスって? 2.ペダリングについて 3.ダンシングについて 4.シッティングでのダンシング 5.サドルの高さについて 6.サドルの前後位置 7.クランク長さについて

Chapter03:より安全に止まるためのヒント
1.ブレーキング 2.ブレーキング能力の実験 3.ブレーキの調整法 4.固定ギアのブレーキ

Chapter04:安全に曲がるためのヒント
1.コーナーリング 2.コーナーリング中のブレーキ 3.遅いほうが速いコーナーリング 4.コーナーリング時の余裕をどうやって感じるか? 5.加速について 6.ターンイン 7.手放しのはなし 8.ハンドルはなぜ傾いたほうに切れるか? 9.トレールとキャスター 10.コーナーリング中の荷重

Chapter05:限られたエネルギーとパワーを使うヒント
1.エネルギーマネージメント 2.運動強度と持続時間 3.体型と作戦

Chapter06:大人の自転車乗りへのヒント
1.自転車のCO2削減効果 2.ザ・サバイバルライド 3.保険の話
Chapter07:自分でホイルを組むヒント
1.組み方のパターンと基本的なこと 2.制作手順 3.スポーク長さの計算 4.スポークにかかる力と張力設定 5.実走耐久 6.変則組みへ

本田技術研究所に勤めるエンジニアがロードバイクに関する様々なトピックについて科学的な説明をマニアックなまでに展開しており、正直まだ理解できないところが多いですが、これだけの内容なので、随所に「そうだったのか!」というところが出てきます。。まだロードバイク暦半年の自分にとっては、細かい数値を考慮した車体設計や、走り方を追求レベルにはありませんが、自転車雑誌等によく書かれている特集記事をより理論的な計算に基づく記述になっているので、自転車雑誌によくあるライダーの経験に基づいて書かれた記事に比べて、非常に納得度が高い本です。
たとえば第5章のエネルギーマネジメントでは、実際に走るときにどれくらいエネルギーを補給すればよいのかという点について、わかりやすい説明が書かれていて、参考になりました。

 まず距離と速度が決まると、必要パワーと所要時間が求められます。これからエネルギーがわかるので、どのくらい食べればよいかがわかります。おなかが減ってから食べたのでは手遅れになるので、とくにロングツーリングで途中で補給ができないときなどは入念に計画します。というのは、ベテランならどのくらい食べればよいかはわかるのですが、その量はとんでもなく多いのです。
 (中略)
ブラケットを握ったポジションで、距離150kmを時速25kmで巡航するとします。私の場合、起伏のある通勤路での実測によると、必要パワーは100Wです。6時間かかるので21600秒、必要エネルギーEは,
E=100×212600=2160(キロジュール/KJ)
1Jは0.238846カロリーなので、2160(KJ)=516(Kcal)
人間のエネルギー効率25%として、必要な食べ物のカロリーCは
C=516/0.25=2064(Kcal)
さらに黙っていてもお腹は減るので、基礎代謝が1日2400Kcal、寝ているときは起きているときの代謝の2/3とすれば、起きているときは1時間に113kcal消費します。そのぶんも考えれば6時間で
C=2064+113×6=2742(Kcal)
が必要になります。ダイエットはしないとして、使ったぶんを食べるとすると、コンビニの80グラムのおにぎり1個が160Kcalですから、6時間で17個分。朝食を食べているならその分を引きます。おにぎりの場合、消化に必要な時間が30分だから、これを見越してちょっと多めですが空腹を感じる30分前に1.5個、以降30分おきに1.5個ずつ食べ続ける計算になります。もし食べる前に空腹を感じたとしたらもう間に合いません。自転車はやたらお腹が減るのです。減ったと感じてから食べても、おにぎりで血糖値が上がるまで45分くらいかかりますから、もう手遅れなのです。・・・・

とこういった形で、わかりやすい式を用いて、具体的に走る際にどれだけ食べておけばよいのか説明していて、なるほどなと思います。噛めば噛むほど味がでるというか、走れば走るほど味が出てくる本だと思いますので、自分はまずは簡単なところから、ここで書かれていることを実践していきたいと思います。