ボートマッチ

毎日新聞の「ボートマッチ」に関して。
テキサス☆政治学留学生活より。

合理的モデルとは要するに「全ての有権者は推移的な選好をもち、それに基づいて投票している」と仮定しています。つまり空間理論では各候補者・政党に有権者が感じる効用を政策距離で、このボートマッチでは適合度で、それぞれ測り数値化することで、有権者の政党選好を推定しており、数値には当然大小があるためその選好は全て推移的になるわけです。
 この合理的モデルの当てはまりが悪い場合、二つのことが考えられます。一つは「有権者は推移的選好をもっており、つまり合理的であるが、その選好は研究者が今回想定したやり方では形成されていない」ということ。そしてもう一つは「有権者は推移的選好をそもそももっておらず、つまり非合理的であり、単なる気まぐれやそのときの感情、あるいは政治的社会化の過程でほとんど習慣として身につけた帰属意識などにもとづいて投票している」(伝統的なミシガン学派の立場)ということ。このように合理的モデルの当てはまりによって合理性のミニマムな定義である「選好の推移性」についてすら判断を下せないわけですから、研究者は例えば空間モデルの当てはまりが悪いからといって、「有権者は合理的ではない」などとは言うべきではありません。