脳科学と教育

情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会報告書」(文部科学省

Ⅲ 報告書の提言等:
子どもの情動等に関して、これまでの研究成果から、以下のことが分かっている
①子どもの対人関係能力や社会的適応能力の育成のためには適切な『愛着』形成が重要であること、
②子どものこころの健全な発達のためには基本的生活リズムの獲得や食育が重要であること、
③子どもが安定した自己を形成するには、他者の存在が重要であり、特に保護者の役割が重要であること、
④情動は、生まれてから5歳くらいまでにその原型が形成されると考えられるため、子どもの情動の健全な発達のためには乳幼児教育が重要であること、
⑤成人脳にも高い可塑性を示す領域があり、この点を意識した生涯学習が重要であること、
⑥前頭連合野大脳辺縁系の機能が子ども達の健やかな発達に重要な機能を発揮しており、前頭連合野の感受性期(臨界期)(用語解説参照)は、シナプス増減の推移から推論すると8歳くらいがピークで20歳くらいまで続くと思われ、その時期に、社会関係の正しい教育と学習が大切であること、など。

今後は、課題解決のために以下のような取組みが必要である。
①子どもの情動等に関する諸課題について、その解決に向けた研究が必要であること、
②学際的連携等をコーディネートする機関の在り方に関する検討が必要であること、
③研究成果のスクリーニングを行う仕組みづくりに関する検討が必要であること、
④研究と教育との連携の推進(双方向的連携の仕組み作り)に関する検討が必要であること、
⑤子どもの発達を早期から前方視的、縦断的にみていく体制作りが必要であること、
⑥子どものこころの発達の支援には、総合的なシステム構築や各機関の連携・協力体制の構築が必要であること、
⑦高い科学性を備えた専門的人材の育成が必要であること、など。

なお、①脳科学の成果は一般社会に与える影響が大きいため、慎重に情報発信する工夫が必要であること、②子どもの情動等の研究の推進に当たっては、脳機能計測機器が人体に与える影響の把握や倫理的な観点からの配慮が必要であること、及び③子どもの発達のひずみを早期に発見することについては、親子への援助体制を十分に確立した上で、慎重になされる必要があることなどの留意点が存在する。

(関連)「「乳幼児教育が重要」 キレる子増加で文科省会議」(河北